20年ほど前の車と比べ、
現代の車は様々な新しいメカが開発され、
それまでオプションだったものも
今では標準装備化されています。
ABSやエアバッグなんかそうですし、
カーナビや自動ブレーキシステムも新型車では、
ほぼ標準化されたのではないでしょうか。
その中でかなり普及して来たと言うのに、未だ
標準装備化が進まないアクセサリーがあります。
それは、ドライブレコーダーです。
ドライブレコーダーは、いざという時
とても頼りになるアクセサリーですが、
なぜか最新型車でも標準で付いてはいません。
今や多くのカーオーナーに支持されているのに、
どうして自動車メーカーは
本腰を入れて標準装備にしないのでしょうか?
単純に、車両のコストアップを
懸念しているのでしょうか?
それも、もしかしたら
1つの要因かも知れません。
実のところ最も大きな理由は、全てのオーナーが、
ドラレコを必要としているとは限らないからなんです。
え、どう言うこと?
きっとあなたは、そう思うでしょう。
と言うことで今回は、
“ドラレコが標準装備されない理由” に付いて、
詳しく述べてみたいと思います。
ドラレコの映像はプライバシーを侵害している
ドライブレコーダーに録画された映像を分析すると、
装着された車が、いつどこを走っていたかが明白です。
特にGPSが内蔵されたドラレコでは、
いつどこを時速何キロで走っていたかを
地図上で、正確に知ることもできます。
しかも映像だけでなく、
車内の音声も録音されますよね。
さらに前方だけでなく、
車内に向けたカメラも搭載したモデルでは、
搭乗者の顔までバッチリ写してしまいます。
このようなドラレコが、例えば社用車に
装着されたとしましょう。
社用車を運転したドライバーの従業員が、
仕事をサボってあらぬ地へ行ってしまえば、
立ちどころにバレてしまいます。
また無意識に、
人に聞かれたくない言葉をつぶやけば、
それも録音されてしまうでしょう。
つまり日々の従業員の行動が、全て
丸見えになってしまう訳ですね。
従業員なら誰でも、こんな車に
乗りたいとは思わないハズ。
また例えが悪いですが、
プライベートで浮気相手とドライブした時、
うっかり録画されていることを忘れてしまって、
後で奥さんにバレたとしても大変。
どんな人であれ、自分の行動を
常時監視されることは嫌いです。
なので、
車にドラレコを付けたくない人って、
少なからずいるんですね。
そんなプライバシーの侵害を問題にしたくないことから、
自動車メーカーはドラレコを標準装備にしないのです。
実際に2016年、ある運送会社が、
配送トラック全車にドラレコを装着しました。
すると、ドライバーのプライバシー侵害だと
労働組合で大問題になったことが、
物流専門誌「物流Weekly」で取り上げられました。
この労使問題の結末は、映像記録は
万が一の事故の証拠のためと理解してもらい、
代わりに録音をオフにすることで合意したそうです。
事故の際、公的機関はドラレコよりEDRを重視する
出典: フリー百科事典 ウィキペディア
ところで自動車メーカーは、
ドラレコを標準装備にしないのには、
もう1つ理由があります。
それは、最近の新型車には衝突事故の前後に、
その車がどんな挙動をしたかを記録する
「EDR」が搭載されているからなんです。
EDRとは、「イベントデータレコーダー」の略。
この装置は、上の写真のように主に運転席の足元に、
エアバッグの操作ユニットと一緒に装備されています。
と言っても、ピンと来ないでしょうが、
これは航空機の “フライトレコーダー” と、
同じようなものと思えば良いでしょう。
事故後EDRを分析すると、
衝突時の車のスピード・エンジンの回転数、
ドライバーのアクセルやブレーキの
踏み具合が判明します。
また、搭乗者のシートベルトの
使用の有無まで分かるとも言われます。
これがあれば、大まかな
事故原因の究明に役立つ訳なんですね。
ちなみにトヨタ自動車は、
2012年以降に発売された全ての新型車に、
EDRを搭載しています。
事故が発生して、原因を解明することになった機関は、
ドラレコのデータよりもEDRのデータを優先します。
なので、自動車メーカーとしてはEDRを装備すれば、
あえてドラレコはなくても良いと考えるのですね。
車に搭載された自動ブレーキの、
情報の入り口となるカメラやレーダーは、
フロントガラス上部に装着されています。
ドラレコもフロントガラスに装着する機種は、
自動ブレーキのカメラ・レーダーの近くに
取り付けるハズですよね?
すると位置によっては、
カメラ・レーダーと
干渉してしまう場合があります。
自動車メーカーに取ってみると、
自動ブレーキを確実に作動させる方が重要で、
ある意味ドラレコは邪魔な存在です。
これらを考慮すれば、
わざわざ自らドラレコに手を染めるよりも、
専門メーカーに任せる方が
良いと考えるのではないでしょうか。
交差点での事故検証は監視カメラの映像を優先
世界中で交通事故が最も発生する場所と言えば、
どこだかお分かりになりますか?
そう、それは交差点です。
警察を主体とする公的機関では、
首都圏を中心として、
交通量が多く事故の発生しやすい交差点に、
監視カメラの設置を進めています。
そして常時、交通の流れを
チェックしているんですね。
交差点で起こった事故に対して、
警察は監視カメラの映像を、
非常に重要視しているのです。
むろん事故当事車が録画したドラレコ映像も、
1つの資料として採用しますが、
最優先される訳ではありません。
なぜなら、ドラレコ映像の所有権は、
その車のオーナーにあるからです。
ですから事故直後の映像データを、
発生直後に警察に届けるのならともかく、
後日提出するとしたら、それまでに
何らかの編集が行われる可能性があります。
編集のプロなら、映像データに写った赤信号を、
青信号に変えてしまうこともできるでしょう。
なので、ドラレコデータを必ずしも
証拠として扱うとは限らないのです。
一方、監視カメラの映像は、
公平な立場で録画されているので、
後で意図的に編集されることはありませんから、
優先して事故原因を探る資料として採用します。
そんなところから、ドライブレコーダーは
案外弱い立場にあると言えるのです。
となれば、自動車メーカーがドラレコに関して、
積極的な態度を取らないのは理解できるでしょう。
だからと言って、
ドラレコの映像はないよりはあった方が、
絶対良いと私は考えています。
事故は必ずしも交差点で起きるとは限らないし、
煽り運転など犯罪に巻き込まれた時には、
有力な助っ人になるのは間違いないですからね。
その他、自動車メーカーがドラレコを標準装備しない理由
自動車メーカーが、
ドラレコを標準装備化しないのは、
ほかにも理由があります。
それは、現在のドラレコの構造にあります。
ドラレコの映像を録画するメカニズムは、
基本的にデジタルビデオカメラと同じで、
レンズを通してSDカードに記録します。
でもデジタルビデオと違い、
ドラレコは車のエンジンがかかっている間、
ず~っと録画をし続けています。
その結果、カードは負担が掛かり、
不要なデータのゴミも溜まりやすく、
また寿命が短いです。
ですからドライバーは、
少なくとも1ヶ月に1~2回のカードの初期化を、
自分の手で行わなければなりません。
ドラレコの中にはフォーマットフリーと言って、
初期化作業をしないで済む機種もありますが、
時々は、やった方がカードの寿命を延ばせます。
今、カードの寿命と述べましたが、
基本的にSDカードは消耗品。
どんなに持っても寿命は2年。
早ければ1年で寿命になるので、
それまでに取り換えた方が無難です。
怠ると録画がされなくなるなど、
不測の事態が生じます。
ならば
これらの作業をしてまでドラレコを使うのは面倒、
と考えるオーナーも少なからずいるのも当然です。
自動車メーカーが、
ドライブレコーダーはオプション扱いで良い、
とするのは自然ではないでしょうか。
今後、国土交通省から、
ドラレコの装着を義務付ける通達が出れば、
状況は一変するでしょう。
結論として、当分の間、ドライブレコーダーが
オプションになり続けるのは間違いなさそうです。
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