ドライブレコーダーは今まで、クルマのアクセサリーとして標準装備されたことはなく、全て後付けのものと決まっていました。
カーディーラーで装着を依頼しても、車輛のカタログからではなく、アクセサリーカタログから選んでいましたよね。
例えあなたがメーカー指定のものを選んだとしても、それは組み立てラインで装着したものでなく、ディーラーの整備工場で取り付けられるのです。
それがこのほどフルチェンジしたトヨタクラウンでは、オーナーがお願いしなくても、初めからドライブレコーダーが標準装備されるようになりました。
参照 トヨタ自動車
これは日本初、いや恐らく世界初のできごとでしょう。
何せ日本を代表する企業のトヨタがすることですから、非常に興味のあるところです。
この搭載のいきさつにはどんな理由があるのか、また今後、後付けのドラレコの立場はどうなってしまうのか、今回色々と考えてみたいと思います。
ドライブレコーダーは今までなぜ標準装備されなかったのか?
今や道を走るクルマのうち、2台に1台くらいの割合で装備されるほど、ドライブレコーダーは普及しています。
なのに自動車メーカーは、ドラレコを正式なアクセサリー装備品としていなのは、ちょっと不思議な感じがしますね。
衝突事故の原因究明に役立つと、ハッキリ認めているにも関わらずですよ。
その理由はいくつかありますが、その1つに、装備されて映像を残されるのを嫌がる人がいることにあります。
自分が運転することで、どこを走ったかどんな走りをしたか、誰が一緒に乗車したかなど記録が残ることは、プライバシーの侵害だと主張するのです。
社用車にドラレコを付ければ、使用者が何の目的でクルマを走らせ、どこを通ってどこへ向かったのか、一連の行動が知られてしまいますからね。
また録音機能があることで、一緒に乗車した人と何を話したか記録されるのも、困ることがあるかも知れません。
例えが悪いですが、浮気相手とドライブする際にも、会話が録音されるばかりでなく、多くの機種に搭載されるGPSで走ったルートも記録されるのです。
ドライブレコーダーのおかげで、言い訳のきかない証拠を残してしまうことでしょう。
また映像を撮られた側の立場からすれば、自分のクルマのナンバーや、自分の顔が映ったものをYouTube等で公開されたら、肖像権の侵害だと訴えられかねないでしょうね。
その片棒を自動車メーカーが担いだと一緒に訴えられたとすれば、メーカーとしてはたまったものではありません。
さらに意外なことに、警察が装着することを嫌がっていると言う話もあります。
走行中のクルマの違反を見つけた警官が、切符を切ろうとしたらそれはおかしいと、ドライバーから抗議を受けた例です。
強制的に違反とされてしまったことで、後からドラレコ映像を確認すると、警官の見間違いだったんですね。
これが明らかになった警官は、大目玉を食らったとのこと。
警官が有利に取り締まりを行うためには、証拠が残るドラレコの映像はない方が良い訳なんでしょう。
参照ページ『ドラレコが嫌いな警察』
それともう1つ、ドラレコがクルマに標準装備されなかった理由として、製造メーカーや販売店の立場を考えてのことがあったんだと思います。
ドラレコをクルマの装備品として標準化してしまえば、後付けモデルを売って取り付けを行っている業界に、大きな打撃を与えてしまうかも知れません。
業界の反発は必須でしょう。
(私事ながら、後付け型ドラレコがなくなってしまえば、このブログを書くネタもなくなって私も困ってしまいます・・・。(>_<) )
他にもまだあるでしょうが、ざっと以上のような理由から、今まで自動車メーカーがドラレコを標準装備してこなかったのです。
なぜクラウンはドラレコを標準装備化した?
参照 トヨタ自動車
自動車メーカーであるトヨタは、以前からドライブレコーダーに、車輛事故の原因究明や煽り運転の抑止に効果的なことは認識していました。
ただ事故の原因を探るには、最近のクルマに装備されているEDR(イベントデータレコーダー)の方が重要、と言う考えがありました。
EDRは事故を起こした際のクルマの動きを、データ化して記録するものです。
参照 Wikipedia
なので前頁で述べた肖像権の問題もあり、ドラレコの搭載をちゅうちょしていたことがあります。
ところが最新のクルマには、ADAS(エイダス)と呼ばれる、先進運転システムを搭載したものがあります。
自動ブレーキを掛けたり、車線逸脱で警報を鳴らすなど、今話題の安全装置です。
ADASは車載カメラを用いて、これらの機能を稼動させています。
こんな先進的な装置を搭載しているのなら、このADASのカメラを流用してドラレコを作動できるのでは?と言う発想から装備を考えたようですね。
そうすればラインの製造工程で組み付けるので、後から取り付けるより車内をスッキリ配線させられます。
そんな経過を経て、まずはクラウンではなくて新型ハリアーに、「録画機能付きデジタルインナーミラー」として装備したのです。
結果これがオーナーには好評だったようで、メーカーとしては上手く行った装備と捉えたのです。
でもこれは、一般のドラレコと比べ性能がやや劣り、録音機能・駐車監視機能がないと言う不満の声がありました。
そんな不満点を解消すべくこれらを改良し、初めて「ドライブレコーダー」と呼ぶことにして、新型クラウンに標準装備した訳なんですね。
ちなみにクラウンのドラレコは、録ったデータを装置のメモリーに内蔵し、データの再生はディスプレイオーディオで行うとのこと。
参照 トヨタ自動車
またクラウンに続き、ヤリスとヤリスクロスにも追加でドラレコが用意されました。
こちらは標準装備ではなく、メーカーオプションとなっています。
標準装備にすると、そのまま車両価格に反映してしまうので、コンパクトクラスカーとしてはそれを避けたようですね。
今のところトヨタ純正ドライブレコーダーは、あくまで安全運転支援装備と言うコンセプトなので、撮った映像を後から楽しむような概念はないとのことです。
今後ドラレコの標準装備は進むのか?後付けモデルの行方は?
今回モデルチェンジされたクラウンなど、新しいトヨタ車にどれほどドラレコが標準装備されるのか、しばらく様子を見てみないと分かりません。
注目すべきは、ヤリスのようにメーカーオプションされたドラレコを、オーナーが積極的に選ぶかどうかではないでしょうか?
もし多くのオーナーが選ぶ傾向にあるのなら、標準装備に格上げするかも知れませんね。
そうなるとそれにならって他社も標準装備させたり、メーカーオプションとして採用することでしょう。
ただ、メーカーオプションの製品は既述のように、あくまで事故等が起こった場合の、状況証拠を掴む目的の用途に限定されると思います。
一方、後付けモデルは、すでに色々なタイプが広まっており、前後だけでなく左右の様子を映すものや、スマホと巧みに連携するものもありますよね?
さらに360度モデルや、趣味の動画作りに利用できる超高性能タイプもあって、選ぶのが楽しいです。
価格が高めでも、奇麗に車内でまとまる純正モデルを選ぶか、価格が安くて高性能で機能が多い後付けモデルを選ぶか、悩むところではないでしょうか。
いずれにせよドラレコ全体の普及率は、冒頭で述べたように約50%ほどで、まだ少なくとも2台に1台は非装着のまま。
非装着のままのクルマのオーナーは、今後どうドライブレコーダーの装着に対して動くのか、こちらも注目したいですね。
私としては後付けドラレコが減ってしまうと、ブログの記事のネタに困るので、ドラレコメーカーさんには頑張って欲しいと願うばかりです。
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